●質問にこたえて
(渡辺知明、コトバ表現研究所、東京都、「共育つうしん」67号、
                        2002年12月掲載)

 ■12月1日の講演会のとき皆さんからいただいた質問に、E-メールで答えをいただきました。

Q:古典で斉読を行うのですがその意味づけがかなりあいまいです。英語のリーディングも斉読を多く取り入れているようです。この斉読についてのお考えを聞かせてください。
A:「斉読」というのは、生徒たちが一斉に声を合わせてよむことですね。『電子ブック版 大辞林』には載っていません。高校の古典での授業のようですが、目的は何なのでしょうか。おそらく、漢字のよみや、歴史的仮名づかいなどの確認のためでしょう。よみの一段階としたら、小学校の低学年の教科書の斉読と同様に、意義があるでしょう。しかし、何度も繰り返す必要はないと思います。
 内容を把握する目的ならば、むしろマイナス面があります。ひとつは、一斉によむためには、調子を合わせる必要があります。そうすると、文の意味よりもよみの調子に合わせるだけになります。また、集団としてよむので内容の把握にについては、個々人が無責任になります。このあたりは、群読についての危うさにもつながりますが、文の理解を音楽のような音(オン)の表現にしてしまいます。
 わたしは次の段階として、一人ひとりが自分の理解をめざす、いわば個人主義的なよみも必要だと思います。その代表的なものは、「朝の読書運動」です。ただし、これは黙読なので、わたしはそれを音読化したらいいと思っています。ちなみに、わたしのサイトの「表現よみ指導法入門」のページでは、「朝の読書」でも表現よみが可能だという提唱をしています。

Q:幼児が言葉(言葉遊び)を楽しむためのポイントは?
A:講演の時には、カルタのようなカードを使ったコトバのグループ遊びの話しをしました。まず、カルタの絵札のような絵と、その名が書かれたカードを作ります。「自動車、ミカン、家、海、ヨット」など、どんなものでもいいのです。それを子どもに持たせて、絵と文字を見て、よみあげる遊びもできます。また、そのカードをさまざまな関連でグループ分けする遊びがあります。要するに、コトバをコトバとして覚えるだけでなく、現実との関係づけをするための遊びです。尻取り遊びなども言葉遊びとしておもしろいものです。

Q:年をとるにつれ人と話すのが面倒になってきました。気楽に話す方法はありますか? あるいはやりすごす方法……について。
A:講演の時には、話すのが面倒だったら、相手に話させましょうと言いました。つまり、インタビューのように相手から話しを引き出すのです。「話し上手は聞き上手」です。その質問の項目として、「ダイ・ドドナ・ドドナ」を紹介しました。細かく言うと、「ダレガ・イツ・ドコデ・ドンナ・ナニヲ・ドウ・ドウスル・ナゼ」となります。これを頭に置いて次つぎに質問すれば、相手からいろいろなことを聞き出すことができます。話しが楽しくなるかならないかは、質問のしかたにかかっています。

Q:耳の聞こえない人に言語を書いて講演会などの通訳をしているのですが、彼らによりよく伝えられるコツなどありますでしょうか?
A:文章の書き方、あるいは情報の要点のとらえ方、というような問題になるかと思います。わたしが、文章における伝達の基本要素としては、「ダイ・ドドナ・ドドナ」の8つの要素を考えています。まず、文としては、主述の関係が大切です。つまり、主部=ダレガ、ナニガ、を明確にして、述部=ドウダ、ドウスル、をつなげることです。
 もう一つは、接続語に代表される論理的な関係だと思います。「しかし、だから、つまり、たとえば」などで、文と文とがつながれると、何について、どのような論理で語られているかわかるでしょう。

Q:印つけよみをすることによって、文章を読みとる力をつける他に、人からの話を聞きとる力も身につくのでしょうか? 訓練次第かしら?
A:話しもじつは文章なのです。ただし、音ですから次つぎに消えていってしまう文章です。話しを聞く訓練というのは、あまり教育されていません。ひとつは、話しの内容をメモに取ることです。そのつぎには、話しのながれをとらえることです。印つけは、文章をよみながら、文章のながれをとらえる練習です。ですから、当然、話しを聞くための訓練にもなります。話しの声はつぎつぎに消えていってしまいますが、文章ならば文字としていつまでも目の前にあります。それを材料にして印つけよみをすることによって、あとで話しを聞くときにも、印しをつけながら聞けるようになります。
HP http://www.ne.jp/asahi/kotoba/tomo/

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